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株式会社TKC発行企業向け情報誌「戦略経営者」2024年7月号に掲載されました!

株式会社TKC発行企業向け情報誌「戦略経営者」2024年7月号に掲載されました!

株式会社TKC発行の企業向け情報誌「戦略経営者」2024年7月号に当事務所のお客様である、酪農王国株式会社様がご紹介されました。

戦略経営者コラム 2024年7月

酪農王国オラッチェ

「丹那」を旗印に地域の価値向上にまい進

伊豆半島の北に位置する丹那盆地で生産される「丹那牛乳」。産地として140年の歴史を有し、学校給食でも供されるなど静岡県東部で暮らす人々にとって、なじみの深い商品だ。「丹那ブランド」普及の原動力となっている酪農王国オラッチェを訪れた。

 オラッチェは、レストランや動物とのふれあい広場、売店等からなる観光牧場である。函南(かんなみ)東部農業協同組、函南町などの出資により設立され、「食の安全・安心」をテーマに1997年に開業した。関東圏からの観光客を中心に、年間20万人超が来園する。看板商品は生乳仕立てのソフトクリームだ。搾乳後最短8時間で販売されるとあって、新鮮かつ濃厚な味わい。ゴールデンウイークや学校の夏休み期間中の売り上げは、1日2000個にせまる。
 ヨーグルトやバウムクーヘン、サブレ等オリジナル商品も充実しており、園内で販売される大半の食品に丹那牛乳を用している。丹那牛乳で特筆されるのは、栄養価と鮮度の高さ。「函南町の基幹産業は酪農業で、直径4キロの丹那盆地に9戸の酪農家が800頭ほどの乳牛を飼育しています。産地の特徴は、酪農家と工場が近接しているところ。雑菌が少な状態で新鮮な生乳を加工できるのが大きな強みです」とは西村悟社長の話。生乳は運搬時間を要するほど酸化し、風味が劣化してしまうのである。

戦略経営者コラム 2024年7月

西村悟社長

酪農王国株式会社
設 立 1996年6月
所在地 静岡県田方郡函南町丹那349-1
売上高 6億5000万円
社員数 19名
会計システム FX2クラウド

卸販売に活路を見いだす

戦略経営者コラム 2024年7月

70年前から変わらない「丹那」のロゴマーク

 食品商社出身の西村氏が酪農王国に入社したのは2001年にさかのぼる。園内で飼育している動物の世話から商品販売、営業活動にいたるまで、業務を精力的にこなしてきた。ただ、入社当時の雰囲気は現在と様相を異にしていた。
 「オラッチェの売店で店番をしていてもお客さまが1日に数人しか来なかったり、売り上げが千円に満たなかったりする日もありました。開業2年目以降赤字続きで、近隣の酪農家の皆さんから白い目で見られていたと思います。社内には現状をよしとするムードが漂い、新たな試みを提案しても反対されるのが常でした」
 従業員の人件費はもちろん、商品の在庫管理、動物のエサ代など施設の運営維持費はばかにならない。営利事業体として存続させるには、柱となる収入源を確立する必要があった。危機感を覚えた西村氏は、オリジナル商品の卸販売に乗りだす。
 「われわれの足元を見つめなおすと、地域資源に恵まれていることがわかりました。ヨーグルトやチーズといった乳製品もあるし、ビールもある。それと丹那牛乳の持つネームバリュー。静岡県東部や神奈川県の人々にとって、その名は知れ渡っています」
 西村社長の言うビールとは、オラッチェ敷地内の醸造所で製造している地ビールのこと。盆地ならではの吹きおろしの風にちなんで「風の谷のビール」と命名した。富士箱根山系の天然水と地元産の大麦、オーガニックモルトを使用しているのがこだわりで、「有機農畜産物加工酒類」の認証も取得している。

戦略経営者コラム 2024年7月

園内の入場料、駐車場代ともに無料

戦略経営者コラム 2024年7月

売店では食品から雑貨まで幅広く扱う

チェコ、ドイツなどのオーガニック原料を使用してつくられる「風の谷のビール」

コロナ禍の廃棄はゼロ

 西村社長は前職で培ったフットワークを武器に、丹那からほど近い熱海、箱根地域の旅館、ホテルに営業攻勢をしかけた。
風の谷のビールの客室への常備と、売店での販売を提案。さらに、丹那牛乳を原料に用いたバウムクーヘンをはじめとする菓子食品を考案して、食品工場に製造を委託した。パッケージには、丸みを帯びた丹那牛乳の文字をあしらい、丹那ブランドを前面に打ち出している。
 「丹那牛乳のロゴマークを付けると、よく売れるんです。営業先の担当者が話を聞いてくれたのも、丹那牛乳のブランドがあればこそ。おかげさまで、スーパーやコンビニエンスストアにも販路を開拓できました」
 丹那牛乳がいかに地域住民から愛されているかを物語るエピソードがある。新型コロナ流行時、学校が休校となり給食が提供停止となった際、丹那牛乳は一滴も廃棄されなかったという。
 「地元の皆さんがパック牛乳を積極的に購入して応援してくれました。近隣の企業さまも、数多くの菓子食品を注文してくれたおかげで、商品を一切廃棄せずにすみ、とてもありがたかったです」
 同社の経営を15年以上サポートしつづけている税理士法人トップの岩瀨貴之税理士は「西村さんが社長に就任したのは21年のコロナ禍。一時期はコロナによる臨時閉園となり会社の行く末が危ぶまれましたが、販売価格の見直しや人員配置などにより、昨年から2年連続で黒字決算を達成されています。西村社長のリーダーシップと柔軟な発想のたまものです」と指摘する。「丹那」のブランド力を高めつつ、自社の成長の源に活用している酪農王国株式会社。山あいの小さな観光牧場は、一番の書き入れどきを迎えようとしている。